当医院における過去6年間のインプラント治療に関する臨床的検討

O-13 当医院における過去6 年間のインプラント治療に関する臨床的検討

Clinical study of implant treatment over the past six years

○ 小巻 健二,勝沼 孝臣,加藤 義浩,大関 豊岳,俵木 勉
○ KOMAKI K, KATUNUMA T, KATOU Y, OHZEKI T, TAWARAGI T

NPO 法人埼玉インプラント研究会
NPO Saitama Implant Association

Ⅰ目的: 近年,インプラント治療は長期的に安定した予知性の高い治療法として認識されてきている.それに伴いインプラント治療を希望する患者は増加傾向にあり,幅広い症例に応用され,その高い生存率が報告されている.しかし,その中にはインプラント周囲炎などを伴った症例も含まれていることが少なからず認められる.そこで今回我々は過去6年間にインプラント埋入手術を行った患者について成功基準などを加味した臨床的検討を行い若干の知見を得たので報告する.

Ⅱ症例の概要: 平成12年7月から平成18年10月までの6年間に当医院を受診し,インプラント埋入を行った患者のうち,ITIインプラントの長径10mmを埋入した計57名に対して,1)性別,2)年齢,3)埋入本数,4)埋入部位,5)インプラントの幅径,6)インプラントの生存率・成功率について検討を行った.ただし,経過観察を行うことが出来なかった3症例は除外した.

Ⅲ結果: 患者は男性18例,女性39例の計57例で,年齢は28歳から87歳であった.埋入本数は85本であった.埋入部位は上顎30 本(35.3 %),下顎55 本(64.7 %)の計85 本で,前歯部16 本(18.8 %), 小臼歯部14 本(16.4 %), 大臼歯部55本(64.7 %)あった.インプラントの幅径は4.1mmのレギュラーが49 本(57.6 %) と最も多く,4.8mmのワイドが30本(35.2 %)3.3mmのナローが6本(7%)であった.埋入したインプラントのうち,2本が撤去された.生存率は97.6%であった.しかし1998年のトロント会議での成功基準では7本除外され,成功率は91.7 %であった.

Ⅳ考察および結論: 今回の調査では,インプラントの生存率は97.7%と過去の報告と類似した結果となったが,成功率91.7%であり,成功基準を満たさない要因としては1年ごとの経年的骨吸収が平均0.2mm以上になっている症例が7本認められたことによる.その原因としてほとんどがインプラント周囲炎によるものと考えられ,将来的に生存率を低下させないためにはインプラント周囲炎の治療や予防が重要であることが示唆された.今後はインプラント周囲炎の治療後も含めたさらなる長期の経過観察が必要であると思われる.